喜怒哀楽。
この日も自転車に乗っていた。特に急ぎの用事もなかったので、日陰になっているアーケードの中をゆっくりと陽気に潜り抜けようとしていた。
なにやら視線を感じる。
自転車の勢いで、数メートル先まで通り過ぎてしまったが、思わずUターンして写真を撮る。
「株式会社金居商店」
表情豊かな文字たちを見て、驚いた。
私に視線を送っていたのは、この4人だった。
「金」・・・ほとんど原型をとどめていないけど、他の文字と組み合わせれば、決して読めなくはない。眉毛がしっかりとしたおじさんが、ニッとニヒルな笑顔を見せている。「金」という文字からどうしてこんな文字が作りだ出るのか。それとも旧漢字に関係しているのか。気になるところだ。
「居」・・・この中では、一番普通の文字。だけど、見ているうちにやっぱり顔に見えてくる。軽蔑しているような冷酷な瞳と、呆れてものが言えないというようなぽかんと開けた口、静かに恐ろしい怒りを感じる表情である。
「商」・・・これは、ほぼ問題なく読めるし、表情もわかりやすい。うそ泣きに見えるくらいあざとい表情。
「店」・・・かなり原型を崩しているように見えるが、冷静に見てみると実はそうでもない。それにしても、楽しそうな表情だ。大きめの口と笑うと目がなくなるあたり、結構好きな顔のタイプだ。いたずらっ子のような無邪気な笑い声で、今の私を包み込んで欲しい。
まさに、喜怒哀楽。
それでいて、全体の統一感もきちんとあるので、本当に素晴らしい。
この日は定休日だったのか、シャターが閉まっていたけど、また日を改めて足を運んでみようと思う。
いつか看板が出来上がるまでのストーリーを聞いてみたい。
どうやらここはカメラ屋さんらしい。
様々な表情を捉えるカメラ・・・きっと素敵なストーリーが隠れているに違いない。(願望)
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