鳥取のナポレオン
麻雀クラブ「ナポレオン」。
ひっそりと、そしてやさしく、いつもドアが開いている。
ただ、さすがの私もあの暗闇の2階に奥に足を踏み入れる勇気は、まだ出ない。
麻雀ではなくドラえもんのドンジャラで育った私に、麻雀を覚える機会など訪れなかった。
9月から職業訓練校に通い始め、毎日の生活範囲が少しだけ広がった。毎日バスに揺られながら眺める景色も、学校周辺の景色もとても新鮮だ。何より、「麻雀クラブ ナポレオン」に出会えたことがとても嬉しい。
はがれかけたシールの文字が、「ナポレオン」の歴史の長さを物語る。一見統一感があるように思えてしまうが、よく見ると「麻雀クラブ」と「ナポレオン」の文字の雰囲気が微妙に異なる。
「麻雀クラブ」の文字は手作り感があふれていて、「ブ」の濁点がクローバーになっているところなど、可愛いらしい遊び心がにじみ出ている。トランプの柄の中でもマイナーな上に、ハサミで切るのも一番面倒くさそうな柄のクローバーを選んだあたりに、優しい愛を感じた。
もう一方の「ナポレオン」の文字は、縦ラインが太く強調されており、その上のナポレオン本人の勇ましいシルエットと合わさり、力強さが表現されている。そして、やっぱり触れずにいられないのは、「ン」の点である。そこには、妙にリアルで繊細な麻雀牌が描かれている。この絵は麻雀牌と本気で向き合わなければ、描くことができないだろう。
以上のことから、麻雀に本気で取り組む男性たち、それを優しく見守る女性たちの姿が思い浮かんだ。きっとここには、さまざまな物語が詰まっているに違いない。
そして、この風貌で『賭けない 飲まない 吸わない 健康マージャン』でないことを、私は願うばかりである。
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