代わりのものなんてない。
場所:休憩室
看板でもなんでもないし、完全に手書きの文字。
黒いマジックの縁取りと丁寧な格子状に色付けられた「ありがとう」。
縁取りは同じものの、緑一色でワイルドに色付けられた「いってらっしゃい」。
休憩室にある限られた種類のマジックが生み出す独特の色使い。
そして、終盤に向かうにつれて徐々に出てくる面倒臭さ。
最初の「あ」と最後の「い」を比較すれば、一目瞭然である。
「ありがとう」「いってらっしゃい」。ありふれた言葉の中に風景や人柄がにじみ出ている。
あぁ、文字は言葉以上に、こんなにもあたたかいものなのだ。
わたしがある一定の文字たちに魅了されている理由の一つがこれなのかもしれない。
読みやすく整った文字も大切だけど、人間臭い文字も魅力的だ。
街にあふれる文字たちにも、きっとたくさんの人柄や想い、背景が込められているはずだ。そんな素敵な文字たちをわたしなりに紹介していきたい。