ビルからのメッセージ。
概念のなさに脱帽した。
ここ最近の暑さにうなだれ、歩きで行動することができず、もっぱら自転車に甘えている。自転車のスピードと暑くて早く室内に逃げ込みたいという思いが重なり、魅力的な看板の発見がなかなかできていなかった。
しかし、「第3小熊ビル」は夜にも関わらず、ある日突然私の目に飛び込んできたのだ。
「第3小熊ビル」の看板を自由にデザインして欲しい、と頼まれたとする。しかし、「小熊」というキーワードと、ビル自体の黄色味の強いクリーム色を見てしまったら、私の頭の中は人気キャラクターの「リ◯ックマ」でとりあえずいっぱいになる。あのかわいいくまちゃんたちが、私の頭の中を占拠している以上、あの世界観から抜け出せないままかわいらしい文字しか浮かばないだろう。
この看板のように、クリーム色のビルに漆黒を重ね、「小熊」の文字をこんなにも力強く、渋く、毛筆で書いたようなデザインは絶対に思いつかない。
かわいいキャラクターにされがちの小熊だが、実際は強く、人を襲うこともあり、凶暴であるという注意喚起もあるのだろうか。熊の目撃情報の多い鳥取県なら、それもうなづけけてしまう。
さらに「小熊」という文字を「小」と「熊」に分けて考えてみよう。
「小」・・・小さい、弱い。
「熊」・・・大きくて強い。
と安易にイメージしてしまうが、それを踏まえた上でもう一度看板の文字を見て欲しい。
これでもかという程に、太く、力強く、躍動感のある「小」の文字。
それに比べて線が細く、動きは感じられるものの、なよなよっとした印象で、最後の一画に向かうにつれ、息も絶え絶えな「熊」という文字。
自転車を漕ぎながら、思わず「普通逆だろ!」とツッコミながら帰宅していたわけだが、それこそ固定概念に支配されている証でもあったのだ。
何かを新しく生み出そうとするとき、この固定概念が邪魔をする。歳を重ねるごとに、何かを経験する度に、頭の中を支配する固定概念の割合がどんどん大きくなっていく。
ときには物事の楽しみ方さえ、邪魔をされている気がしてしまう。仕事であったり、勉強であったり、人との触れ合いでだったり、音楽であったり、本であったり。固定概念がなく、素直に楽しめていたときもあったはずなのに、今それを感じることはほぼできない。
しかしそれは、いらないと思いながらも、自分で固定概念を勝手に作ってしまっているだけなのかもしれない。これからは、なるべく作らないようにしていこう。
そんなことを、深夜にもんもんと考えさせてくれた看板であった。
外が明るい。
twitter→くろみき (@96miki0113) | Twitter
facebook→黒田ミキ(https://www.facebook.com/96miki0113)